第1回漢検1級模試 総評





 第1回漢検1級模試に関して、出題の意図や総評などをまとめました。



 なお、この記事をご覧になる際は、第1回漢検1級模試も併せてご覧ください。

 あまり深く調べてないので、断言している箇所に間違いがあるかもしれません。気づいた方はご指摘ください。





 問題内容を含みますのでつづきからどうぞ。










 まずは総評から。


 今回漢検1級模試を作成するにあたって、過去10年に漢検1級で出題されていない問題を多く取り入れる方針とした。
 また、読み問題書き取り問題ともに、あらゆる部首のものから均等に出題するよう配慮した。

 闇雲に初出難問を織り交ぜるのではなく、書き取りはできるだけ普通の辞書(新明解国語辞典を基準とした)に典拠があるものを中心に、常用漢字からも幅広く出題した。漢検1級で現れる常用漢字を用いた初出難問の類は、この新明解国語辞典に掲載されているものが多いためである。

 漢検漢字辞典も参考にし、そこに掲載されているかどうかも確認した(数問はこの辞書に典拠がない)。




 読み問題は辞典に典拠がないものも出題したい気持ちではいたが、手許の資料が乏しく、市販の漢和辞典を渉猟して出題するに至った。





 なお、模試を作成するために用いた資料は以下の通りである。


 ◎ 漢検漢字辞典第二版
 ◎ 漢検四字熟語辞典第一版
 ◎ 漢検要覧1級・準1級
 ◎ 新明解国語辞典第六版
 ◎ 漢語林(1987年初版)
 ◎ 新明解故事ことわざ辞典
 ◎ 故事俗信ことわざ大辞典(初版)


 他、語意の参考程度に広辞苑第二版補訂版、旺文社漢和辞典改訂新版、角川新字源も僅かながら用いた。
 また、goo辞書も用い、書き取り問題は四字熟語と故事諺を除いてここに典拠があることを確認している。




 ここからは項目別の評価へと移る。



 (一) 例年通り

 漢検1級の頻出問題や過去問、市販の漢和辞典から出題しているため、ものすごくむずかしい問題はない。
 音読み、頻出問題を除いて4「殍饉」や10「桔槔」は近いうちに出題されてもおかしくないだろう。
 訓読み、こちらも音読みと同じく頻出問題をベースに、以前から出題されると予想していた21「朸」や27「釁る」、個人的に十二支の訓読みは弱く、苦手な人も多いのではないかと思い採用した。
 余談だが1の文章は今年のノーベル物理学賞についてである。



 (二) やや難

 1~5は頻出、6以降は7を除いて過去10年に書き取りで出題例がない。
 常用漢字や準1級配当のものが多く、本番よりやや難。
 6「甚く」11「彝」14「轂」はそろそろ書き取りで出題されるのではないだろうか。

 新明解国語辞典の掲載具合について。6「甚く」は漢字表記がなく、7「淅瀝」11「彝」は見出し語にない。他はすべて掲載されている。
 常用漢字で大幅に失点してしまった方は、新明解国語辞典を枕頭の書として眺めてみてはいかがだろう。
 ちなみに、漢検準1級の鬼門となる場合が多い共通漢字項目は、ほぼ新明解に掲載されている熟語が用いられている。



 (三) やや難

 国字の出題範囲は限られているので、本番と難易にほとんど差はない。
 準1級配当である栂(つが・とが)が出題されることは滅多になく、これが一番むずかしかったのでは。



 (四) 例年通り

 2「膾炙」5「均霑」は頻出で、かつ粉らわしい選択肢が語群にないから確実に得点したい。
 1「刮目」が「かつもく」か「どうじゃく」か、3「儼乎」が「げんこ」か「けいけん」かで迷った方は少なくないはずだ。
 4「藩籬・樊籬」は捨て問題。意味を知らなくても語群から「はんり」のみに絞られ、「藩・樊」「籬」のどちらも訓読み「まがき」であることから導ける。この問題を正解した方なら、今回の模試では合格圏内であろう。



 (五) やや難

 初出は1「狐裘羔袖」8「挙案斉眉」10「篳路藍縷」の3問。8は常用配当の四字熟語まで隅無く調べていて、10は「襤褸」でないことを意識していないと得点できない難問。
 9「精励恪勤」の意味は、力を尽くして学業や仕事に励むことである。意味の選択、11の苦学するたとえでもなく、13の大変苦労して働くでもないので注意したい。
 近年四字熟語は難化しているため、意味も疎かにできない。入念に調べて陥穽に嵌まらないよう心がけるべきである。



 (六) 例年通り

 難問は2「完骨」。ほかは初出も多いが漢字好きなら見たことあるものも多いだろう。今回出題した当て字・熟字訓はすべてgoo辞書に掲載されている。
 個人的に3「飛蝗」が「ばった」か「いなご」かで悩むところ。「蝗」を「ばった」と読む例もあるが漢検要覧には掲載されてなく、「飛蝗」を「いなご」と読む例はない(詳しく調べていないので「いなご」も正答になり得るかもです)。



 (七) 例年通り

 過去に同様の形式で出題されているものはないが、過去に読みとして出題されているものもある(文章題で「逬散」)。
 やや難の問題は4「潭い」5「誥命」、捨て問題は8「遜る」であった。8を答えられた方は相当な実力者。



 (八) やや難

 まず対義語について。頻出・過去問が3問、初出2問。2「長軀⇔侏儒」はそろそろ出題されてもいいころではないかと思う。3「先鋒⇔殿軍」は、最後尾の意味を表す「殿(しんがり)」に気づけば容易に答えられたか。

 類義語について。頻出1問、初出4問。初出は語群から間違えずに選択できれば、予想で答えられるものが多い。9「唯諾⇔盲従」は捨て問題。

 解答させる熟語は、8「匹儔」を除いてすべて新明解国語辞典に掲載されている。
 「比肩」が新明解に載っている。しかしこの書き取りは平易すぎるため「匹儔」を書き取りとした。



 (九) やや難

 過去に出題されたものはおそらく2問。過去に出題されてないことをむずかしいとするなら、かなりの難問だろう。
 とはいえ有名な故事・諺が多いので2「守成」7「信心」など、すんなり答えられるものも多い。ここを正解できるかどうかで実力の有無を問われる。
 1「蹲鴟」5「偃鼠」9「臥榻」は、出題されそうな故事・諺を予習していた方なら目を通していただろう。
 3「篤恭」は捨て問題。個人的に故事成語は典拠がマニアックなもの(だれだれの詩の一節、など)からは出題しないと決めている。出典は礼記―中庸、「君子篤恭而天下平」とあり、故事俗信ことわざ大辞典に掲載されている。

 10「瞑眩」の読みについて。
 ◎ 新明解故事ことわざ辞典「メイゲン(メンケン・メンゲンとも)」
 ◎ 故事俗信ことわざ大辞典「メイゲン」
 ◎ goo辞書「メンケン(メンゲンとも)」
 ◎ 漢語林「メイゲン・メンケン」
 ◎ 旺文社漢和辞典「メンゲン」
 ◎ 広辞苑第二版「メンケン」

 故事としては「メイゲン」が一般的、熟語としては「メンケン」が一般的であると把捉できる。ここでは熟語で度々用いられる「メンケン」とした。漢検要覧には、瞑の音読み「ミョウ・メイ・メン」、眩の音読み「ゲン」と記載されている。



 (十) 例年通り

 出典 A:徳富蘇峰「家庭小訓」 コマ番号19 左ページ
 出典 B:高山樗牛「人生終に奈何」 後半
 出典 C:芥川龍之介「木曾義仲論(東京府立第三中学校学友会誌)」 一 平氏政府 の真ん中あたり

 書き取り1「禍因」と読みエ「藐然」が捨て問題。
 30点満点を狙うのは非常に厳しい。ただ他の問題は、読みも書きも特にむずかしいというわけではなく、常用漢字から1級配当までの豊かな知識があれば、大きく失点してしまうことは免れたであろう。
 1級配当のみならず、常用漢字の書き取りから準1級配当の読みまで、幅広く知識を問う内容とした。





 全体を通してとりわけ平易な項目がなく、ひねった問題も多いため、漢検1級リピーター以外の方からすると相当むずかしい部類の問題ではないだろうか。合格率予想は10%程度。







 項目別配当難度。以下テンプレ


・各項目別に、漢検1級配当ではないものの配点を挙げ、( )内には常用漢字のみでの配点を挙げます。
常用漢字のみの構成で2点分、準1級配当までの構成で1点分なら 3(2) と表記します。

・標準解答が複数あり、どの字を書くかによって配当が変化するものは、より一般的なものを選びます(そのつど註釈をつけます)。

・常用漢字でも、常用外の読みであれば準1級、1級配当の読みと記載されていたら1級とします(常用外の判断については、平成24年3月発行「漢検要覧1/準1級」に準拠します)。

・熟字訓は、1級配当ではない漢字で構成されていても、例外を除きすべて1級配当とします。

・各項目内容:(一)読み、(二)書き取り、(三)国字、(四)語選択書き取り、(五)四字熟語、(六)熟字訓・当て字、(七)熟語の読み・一字訓読み、(八)対義語・類義語、(九)故事諺、(十)文章題 です。





 ◎ 第1回漢検1級模試

(一) → 5(0)
(二) → 8(4) ※1
(三) → 0(0)
(四) → 0(0)
(五) → 2(2) ※2
(六) → 0(0)
(七) → 1(0)
(八) → 4(4)
(九) → 8(8)
(十) → 13(8)

計 → 41(26)


※1 「甚く」は、常用漢字の漢検1級配当読み。
※2 「燕説」の書き取りは準1級配当だが、「郢書燕説」が漢検1級配当なので1級配当とした。




 批判を受けそうなほど常用漢字の問題ばかりにしたつもりだったが、調べてみるとほどよい感じに仕上がっていた。
 今後出題されそうな、漢検2級では問われない常用漢字をふんだんにとりいれたつもりだ。
 この機会に1級配当だけでなく、常用漢字の熟語にもしっかり目を通してほしい。



 作問するにあたって、ひたすら辞書を渉猟する作業が必要となる。それが自分のためとなるから、勉強の一環としてまた模試を作成したい。


 










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